イベントの詳細

2009/12/21 12月18日開催 FD講演会報告事務局

FD講演会実施報告
          いわて高等教育コンソーシアム
             FDプロジェクト委員会


平成21年12月18日に、いわて高等教育コンソーシアムFDプロジェクト委員会主催のFD講演会を開催しました。今回は国立教育政策研究所の川島啓二先生から「大学教育の革新とFDの新展開」というタイトルで、主に新規にFD委員会の委員になられた方を対象と
したご講演をいただきました。
 今回の講演会は、遠隔講義(TV会議)システムを活用し、岩手大学会場の他、岩手医科大学、盛岡大学、富士大学をつないでの実施となり、講演後には遠隔講義システムを利用した質疑応答を行いました。その後、岩手大学会場にて参加した委員と講師との懇談を行いました。

■日時・場所
*平成21年12月18日(金) 講演会:15:00〜17:00
懇談:17:00〜18:00
*岩手大学学生センター棟2F G22教室
及び、岩手医科大学、盛岡大学、富士大学会場では、遠隔講義システムにて受信。

■講師
*川島啓二氏(国立教育政策研究所高等教育研究部総括研究官)

■参加者
*岩手大学会場12名(岩手県立大学1名・岩手医科大学1名・盛岡大学1名含)
*岩手医科大学会場(遠隔講義システム)15名
*富士大学会場(遠隔講義システム)6名*盛岡大学会場(遠隔講義システム)3名

■講演会概要
国立教育政策研究所の川島先生より、「大学教育の革新とFDの新展開」というタイトルで講演をいただきました。川島先生は、「FDを教授スキルの獲得としてとらえるのではなく、教育開発としてとらえた方がよい」という視点から、例として、「スキル」−「フレーム」を横軸に、「革新」−「改善」を縦軸に問題軸としてとらえた図を提示されました。そこには、例として、第1象限には「カリキュラム開発」や「組織開発」、第2象限には「ワークショップ」や「振り返り」、第3象限には「教授法」、第4象限には「授業評価」などの項目が当てはまります。そして、例えば立命館大学や愛媛大学の「FDの定義」を示し、それが単に「授業スキルの向上」にとどまらず、カリキュラムや組織にまで踏み込んだ改善を目指している点を指摘されました。また「FD」の取り組み方として、新しく何かを行うというよりも、まず「自分たちがやっていること」を見つけ出し、それを整理していくことから始めるのがいいのではないか、との示唆をいただきました。
 「FD」に関わる政策動向からは、あくまでも「政策誘導があったから」ではなく、「大学」を変えていかなければならない現状があることを認識してほしい、とのお話がありました。特に高等教育機関として「教育を(個人の教員に任せるのではなく)システム的に実施する(この「システム」とは情報システムのことではない)」ことの重要性や、社会に対する説明責任を果たす必要性を強調されました。
 上記に関連して、FD実質化のためのツールとして開発された「FDマップ」が紹介され、これを各大学の取り組みを整理し、足りないところを補強するのに利用できるのではないか、という提案がありました。
 また、「学士課程教育の構築に向けて(答申)」(中央教育審議会)等からは、「学問体系」を伝達する大学教育像から、「学生の学習プロセス」がメインになる大学教育像への変化が必要であることが読み取れ、学生の学習プロセスを手助けする役割としての大学教員及び大学職員の重要性が説かれました。
 講演後、各会場の参加者から質問やコメント等が寄せられました。例えば、「FDというのはスキルアップというイメージを持っていたが、責任ある教育システムを作ることがFDである、というとらえ方もあることを知り、うちの大学でもその方向で努力していきたい」といったコメントや、「学習者にあわせる、ということはわかるけれども、教える内容はやはり学問体系そのものなのではないか。学生の反応をみて、学生との相互作用を考えながら授業をすると教えたい内容の1/10程度しか扱えない。工学部の学生として、やはり今後の学習の基盤として基礎的なところはきちんと教えたいと思っているのだが。」といった質問がありました。この質問に対しては「ある大学では、今まで学士で扱っていた内容のあるレベル以上を大学院で扱う、という判断をしている。大学全体でどのような学士を育てるのか、その議論が行われてしかるべきだと思う。」という回答がありました。また「FDに学生を取り入れる事例を教えていただけますか?」という質問に対しては、岡山大学の学生・教職員教育改善委員会の取り組みの事例紹介がありました。「FDマップについて、このようにプログラム化、もしくはシステム化していくと、形骸化してしまうのではないか?実質化するにはどうすればよいのか?」という質問に対しては、「その通りだと思う。だけど、実はこの狙いはプログラム化ではなく、プログラムはやはり各大学で考えなくてはいけないことであくまでもこれはお助けグッズにすぎない。システム化というのも、何かものを作って動かせばうまくいく、というものではない。実質化の意図するところは、ステップをきちんと踏
んで進んでいることを外部に示すことでもある。」といった回答をいただきました。
 今回、遠隔講義システムを使った初めての試みで、結果として、岩手大学会場の参加者が少なくなってしまったことは残念でした。しかし、講演後の質疑応答では、他会場からも、積極的に質問やコメントがよせられたことが驚きでした。岩手大学にくることができなくても、勤務大学で講演をきいたり意見交換したりできる可能性が広がったことは、大きなメリットと考えることができるでしょう。
H21.12.18 FD講演会報告書  ファイルサイズ/300KB
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