イベントの詳細

2010/04/07 3月5日開催FD研究会報告事務局

FD研究会「FDのあり方を考える」実施報告
いわて高等教育コンソーシアム
FDプロジェクト委員会
平成22年3月5日に,いわて高等教育コンソーシアムFDプロジェクト委員会主催のFD研究会「FDのあり方を考える」を開催しました。今回は,京都大学高等教育研究開発推進センター長の田中毎実先生をお迎えし、「相互研修型FDの組織化と京都大学の実践」というテーマで話題提供をいただき,その後、プロジェクト委員から、各大学でのFDや授業改善の取り組みについて報告し、意見交換を行いました。
■日時・場所
*平成22年3月5日(金) 研究会:15:20〜18:00
*岩手県立大学アイーナキャンパス学習室1
■講師
*田中毎実氏(京都大学教授/高等教育研究開発推進センター長)
■参加者
*岩手大学4名*岩手県立大学3名*岩手医科大学8名
*富士大学1名*盛岡大学2名
■研究会概要
 冒頭に参加者の自己紹介を行った後、田中先生より「相互研修型FDの組織化と京都大学の実践」というテーマで話題提供をいただきました。田中先生は京都大学のセンター教員としてFDに取り組み、15年間の間に約200の授業を参観されてきたそうです。また、京都大学の各研究科をヒアリングしてまわった経験や、自身の授業を題材として公開授業と検討会を継続して実施してきた経験、さらに、工学部と協働の取り組みなど、田中先生のこれまでの実践に沿った具体的なFDの話は、参加された先生方にとっても、大変有意義なものになりました。
 田中先生は、縦軸に「非日常的・イベント的」と「日常的」を、横軸に「制度化」と「自己組織化」を配置し、第一象限にU型(イベント的・自己組織化型)、第二象限にT型(啓蒙型)、第三象限にW型(日常的・制度化型)、第四象限にV型(日常的・自己組織化型)と分類したFDの類型化の図を示されました。そして、目指すのはV型の相互研修型FDで、「ローカリズム」を尊重し、それぞれの組織で行われてきた教育改革をベースとして、教育開発を行うことが大切であることを強調されました。高等教育研究開発推進センターで、「ローカルな教育実績と改善実績」「個人、部局などの単位の教育改善の蓄積」「泡沫のように消えてきた改善成果の蓄積、伝達、共有」を意識し、ローカルな日常性に根ざして、教育改革の組織化を進めているとのことです。
 また、各大学が連携してFDに取り組むいくつかのFDネットワークの事例とその分析結果もご紹介いただきました。田中先生によると、「いわて高等教育コンソーシアム」のFDネットワークの取り組みは、今までの他の事例に当てはまらないそうで、私たちの取り組みが今後どのように進むのかについて、注目しているとのことでした。
 田中先生から話題提供をいただいた後、各プロジェクト委員から各大学で行われているFDの取り組みの報告がありました。
 岩手県立大学では、平成17年から担当の機関を設置し、全学的なFDの取り組みを開始しました。年に何度か講演会等を開催する他、やはり学部のことは学部で考えるべき、との方
針から、学部単位でのFD活動を推進しており、FDを「実質化」するための支援の方策を検討している、との報告がありました。
 岩手医科大学では、全学的な取り組みはなく、今回はじめて3学部の担当者が顔を合わせたとのことで、各学部からそれぞれ報告をいただきました。医学部では、医学教育学会が進めている医学教育ワークショップの方式を取り入れ、新しい教育方法論がでてくると、それを勉強するためのワークショップを開催しています。歯学部でも、医学教育と同様、ワークショップ等を開催しています。学生に国家試験に合格する力をつけさせなければならないので、カリキュラムや教育方法についてはよく話し合いがされている、とのことでした。薬学部では、新設学部のため、教育経験の少ない教員が多く、薬学教育ワークショップ等を開催するなど、教育について考える機会を設けているとの報告がありました。
 富士大学では、前後期2科目ずつ、希望する授業について、学習指導案を作成し、その上でアンケートを実施しています。また、授業公開と検討会も行われていますが、参加すると勉強になることは確かだけれども、担当授業数が多いので、なかなか時間があわない、との報告がありました。
 盛岡大学では、2008年からそれぞれ1科目について「効果調査」というアンケートを実施し、その1科目については、担当教員が「効果調査」の結果と試験等の結果を4ページ(A4版)にまとめる試みを始めたとのことです。さらに、学生の期待にこたえている科目として選ばれた先生には、公開授業と検討会を行っているとの報告がありました。
 岩手大学では、学部のFDは学部が、全学共通教育と全学で実施した方が効率が良い活動については大学教育総合センターが実施主体となり、それぞれアンケートなどの活動を行っ
ています。特徴的な点としては、「教員の日々の授業改善」をできる限り蓄積し、それを共有するためのシステムとして、教育支援システム「アイアシスタント」と教授学習システム「匠の技」の開発に取り組んでいると、報告がありました。田中先生からは、各大学がそれぞれローカリティにあわせて実施していることが良いことだけれども、それ故に「欠点」がわからなくなることがあるかもしれない。そのような時に連携の良さが生きてくるのではないか、というコメントをいただきました。また、各大学の報告から、基本的な問題点はどの大学でも同様で、解決策は自分たちで探すしかないし、場合によっては「仕方ない」こともある、また、たとえば「板書」については、「黒板に板書する」のがいいのか「パワーポイントを使う」のがいいのかは一概に決められることではなく、対象とする学生、教える内容に適したものを使い分けられるのが良い、などのアドバイスをいただきました。
 今回は、田中先生の実践に基づいた話題提供のもと、各大学の取り組みに対する意見交換等も時間ぎりぎりまで活発に行われ、大変充実した時間となりました。教育に関する取り組みについて、顔をあわせて意見交換することがFDの基本であることを確認できた研究会でした。今後も、このような機会を設けていきたいと考えています。





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